ELECTRIC💡陰キャ@高専生

電気系の高専生が書いています。迷走しています。

ベクトルの線積分

 

 

仕事(物理量)

物体が直線に沿って運動した場合の一定の力Fがした仕事

図1.1

図1.1のように物体に一定の力Fが加わり、物体が一直線上にxだけ移動した場合、この力がした仕事の大きさはW=Fxcosθである。

実は、仕事はベクトルの内積になっている。xは変位ベクトル\vec{r}の大きさ、Fは力ベクトル\vec{F}の大きさとすると、\vec{F}\cdot\vec{r}は、\vec{F}\vec{r}の向きにした仕事Wを表していることが分かる。すなわちW=\vec{F}\cdot\vec{r}であることが分かる。

【1】一定の力\vec{F}=(2,3,4)を受けながら物体が直交座標系の点A(1,-1,0)から点B(3,2,4)へ移動した。\vec{F}がした仕事を求めよ。ただし、長さの単位をm,力の単位をNである。(【】の解説・解答は一番最後に書いてある。)

 

力が変化したり曲線上を運動する場合

微小な位置変化ごとの仕事に細かく分割し、それらを全て連続的に足す必要がある。(積分)

図1.2

図1.2では、青い→が物体がその位置にあるときに働いた力\vec{f}を表し、緑の→が微小な位置変化d\vec{r}を表す。それぞれの場所でした仕事dW=\vec{f}\cdot d\vec{r}を全て足し合わせた合計が全体での仕事Wになる。

W=\int_{C}{\vec{f}}{\cdot}{d\vec{r}}が結果だが、このままでは計算できない。これの計算法が本題「ベクトルの線積分の計算法」になる。

積分の計算法

\vec{f}は位置\vec{r}によって決まるので、\vec{f}=\vec{f}(\vec{r})と表せる。

位置\vec{r}は座標(x,y,z)なので、\vec{r}=(x,y,z)と表せ、\vec{f}(\vec{r})も座標(x,y,z)の関数\vec{f}(x,y,z)=(f_x(x,y,z),f_y(x,y,z),f_z(x,y,z))と表せる。

手順1:積分経路Cをパラメータ表示(媒介変数表示)で表す

図1.2の曲線Cを積分経路と言う。この経路は(x,y,z)=(x(t),y(t),z(t))のようにパラメータtを用いて表すことが出来るため、\vec{r}をこの経路Cを表すように指定することができる。

この操作を行うと、\vec{r}=\vec{r}(t)=(x(t),y(t),z(t))(a \leqq t \leqq b)のようになる。

積分経路C:r(t)はr(a)とr(b)を移動する

手順2:置換積分で計算する。

位置\vec{r}=(x(t),y(t),z(t))が定まったため、位置によって決まる力\vec{f}(\vec{r})も定まる。\vec{f}(\vec{r})=\vec{f}(x,y,z)\vec{r}=(x(t),y(t),z(t))を代入すれば、\vec{f}tの関数として表すことができ、置換積分で計算することができる。

\int_{C}\vec{f}(\vec{r})\cdot d\vec{r}=\int_{a}^{b}\vec{f}(\vec{r}(t))\cdot\frac{d\vec{r}(t)}{dt}dt

内積スカラーになるため、これはただt積分するだけで計算できる。

 

【2】平面内を運動する質点に働く力\vec{f}\vec{f}(x,y)=(axy,by^2)で与えられるとき、次の問に答えなさい。

(1)x軸上の点A(r,0)からy軸上の点C(0,r)まで、半径rの円周に沿って動く場合の\vec{f}のする仕事を求めよ。

(2)x軸上の点A(r,0)からy軸上の点C(0,r)まで、線分ACに沿って動く場合の\vec{f}のする仕事を求めよ。

 

問題の解答

【1】変位\Delta\vec{r}=\vec{AB}=(3,2,4)-(1,-1,0)=(2,3,4),力\vec{F}=(2,3,4)なので、

仕事\Delta W=\vec{F}\cdot\Delta\vec{r}=2\cdot 2 +3\cdot 3 +4\cdot 4=29[J]

 

【2】

(1)

(1)の積分経路

この経路はC_1:\vec{r}=(r\cos t,r\sin t)(0\leqq t\leqq\frac{π}{2})と表せる。

\vec{f}=(axy,by^2)x=r\cos t,r\sin tを代入すると、\vec{f}=(ar^2\cos t\sin t,br^2\sin^2 t)となる。

よって、

W=\int_{C_1}\vec{f}\cdot d\vec{r}=\int_{0}^{\frac{π}{2}}\vec{f}\cdot\frac{d\vec{r}}{dt}dt\\=\int_{0}^{\frac{π}{2}}(ar^2\cos t\sin t,br^2\sin^2 t)\cdot(-r\sin t,r\cos t)dt\\=(b-a)r^3\int_{0}^{\frac{π}{2}}\sin^2 t\cos t dt=\frac{b-a}{3}r^3

(2)

(2)の積分経路

この経路はC_2:\vec{r}=(r-t,t)(0\leqq t\leqq r)と表せる。

\vec{f}=(axy,by^2)に代入すると、\vec{f}=(a(r-t)t,bt^2)と表せる。

よって、

W=\int_{C_2}\vec{f}\cdot d\vec{r}=\int_{0}^{r}\vec{f}\cdot\frac{d\vec{r}}{dt}dt\\=\int_{0}^{r}((a+b)t^2-art)dt=\frac{2b-a}{6}r^3